烽火山

山行日  2005・4・5

山 域  多良山系 

行 程  

JR湯江駅9:25⇒9:30旧高来町役場9:45⇒いこいの村長崎分岐10:50⇒11:50⇒烽火山12:40⇒15:00JR湯江駅


烽火山は全国どこにでもあるが今回は長崎県高来町の烽火山に登ることにした。
高来の烽火山は諫早湾と多良岳の中間にあり、標高554.3mの里山である。
大局的な見方をすれば、多良岳のなだらかな稜線の一部になる。
特にきつい勾配のところもなく、だらだらとした坂を我慢して登りつづければ山頂にたどり着く。きょうはいつもと違って単独行である。時間的には余裕ある行程でのんびりとマイペースで登ってみたい。


JR湯江駅

ここは長崎本線の湯江駅で、無人駅。
電車から降りるとき、電車の運転手に切符を渡して降りた。乗るときには駅舎の自動販売機で切符を買う。
博多から長崎まで新幹線建設が話題になっているが新幹線が開通すると諫早〜肥前山口間はJRから切り離される運命にある。
いま長崎県と佐賀県は建設賛成派と反対派が激しい運動をやっている。
政治的に見切り発車の機運が強く、調査費が予算化され動き出しているようだ。
この駅に降りたのは、午前9時25分。降りたお客は3人だけ。帰りの時刻を確認する。この駅は特急は通過し、普通電車だけが停車する。
普通電車は朝夕は1時間おきに、昼間は2時間おきしか通らない。
帰りは15時58分の電車がよさそうだ。手帳にメモして、いよいよ出発。

単独行となると、地図と磁石は必需品である。
地図は登山で使う2万5千分の1だが、手元の地図は古くて、このごろ完成した林道は記載されていない。
JR駅から歩いて5分のところに元役場がある。役場の産業振興課で手元の地図を見せ、新しくできた林道を書き込んで欲しいと申し出た。
「歩いて烽火山に登るんですか?」と職員から怪訝な顔をされた。「頂上まで林道がホゲていますよ。車でいけます」と言う。
「ホゲていますよ」懐かしい言葉である。久し振りで聞いた。嬉しくなった。この職員さんまだ20代の青年だが地元に融けきっている感じ。私は地元のおっさんだからこの言葉の意味はすぐ理解できた。しかし、他所から来た人にこの言葉が通じただろうか。
林道を記入した最新版の地図をコピーして渡してくれた。御礼を言って庁舎を出た。

諫早市・湯江支所(旧高来町役場)3月1日に合併したばかり

中央左寄りの山が烽火山。右の建物は「いこいの村長崎」
庁舎を出発して当分の間、点々と人家が散らばる集落を通過する。10分ほど歩いた地点で目的の山頂を見上げた。
地図上で約8kmの距離。1時間30分はかかりそうだ。
JR湯江駅は海抜5mぐらいだろう。烽火山は554mだから正味550mの高低差になる。
一般的に高低差300mを1時間として登山計画を立てることが多い。ここはほとんど林道が整備されているから1時間半もあればよかろうと判断した。
歩き始めておおよそ1時間ぐらいのところで左側に溜池があった。ここまではほとんどが、畑や枯草の原野であっただけに溜池が珍しく新鮮な景色に見えた。
春の陽気で水温むといった感じである。周りの木々は新芽をふき始め、活気付いている。
この眺めを楽しみながら帽子を取り、頭や顔の汗を拭いて水分補給をする。湖面は何となく心を和ませ、疲れが取れたように感じた。

溜池

左は「いこいの村長崎」へ右は「烽火山」への分岐
役場を出発してから1時間で「町民いこいの森」まで登ってきた。
ここに来るまでに新諫早市誕生による市長・市会議員選挙の選挙カーに何回も出合った。
車は時々通るが歩いているのは私一人。「よろしくお願いしまぁ〜す」とボチュームを上げたマイクから流れてくる。
手を振って答えてやると「ありがとうございます」と賑やかなこと。のんびりと鳴いていたウグイスもびっくりしているようだ。
烽火山へはこの「いこいの森」の右側の淵を巻くようにして登っていく。「いこいの森」の山頂まで約15分かかった。
「いこいの森」からは山の地形に変わり幾分坂が急になってくる。林道の脇はアオモジが自生し、いまを盛に満開であった。アオモジ街道といった雰囲気である。
サクラ並木もよいがこちらのアオモジ並木も素晴らしい。

アオモジの花

復元された烽火台
「いこいの森」の頂上に復元された烽火台はあった。
最初、ここが烽火台の跡なのかと思ったが説明板を読んで事情がわかった。
実際の設置場所はまだ山の上にあったそうである。
たぶん「いこいの森」遊びに来た人たちに見てもらうためにここに移したのではないかと想像した。
直径2.5m、高さ.1.5mぐらいの石積みで予想していたより小型だった。何かの資料をもとに復元されたのだろうが結構複雑にできている。
底には4箇所に穴が開けてあり、これは通気穴か灰を掻きだすためのものだろうか。
壱岐の岳の辻山頂にある烽火台とは作り方が違うようだ。

比べて見てください。壱岐の烽火台

烽火台の構造

烽火山(554m)山頂
烽火台で写真を撮ったあと烽火山へ向かった。途中に「烽火台跡」の案内板があったが帰りに寄ることにして先を急いだ。展望台も通過。山頂に着いてから展望台へ引き返し昼食はここですることとして山頂へと登った。
12:50山頂に着いた。途中役場に寄り道したが所要時間は2時間20分である。
とうとう土の道は踏まずに山頂まで来てしまった。「頂上まで林道がホゲていますよ。車でいけます」と言った職員の言葉が浮かんできた。
展望は北の方角が少しひらけあとは樹木で遮られていた。三角点を探したがとうとう見つけることができなかった。舗装された脇に登山道らしい踏み後を見つけたが藪に覆われとても歩ける状態ではなかった。
山頂手前、50mぐらいの所に展望台がある。ここからは北と東のほうは樹木で遮られ展望は利かない。
西は、諫早市街、大村湾、西彼杵半島が見えるはずだが霞がかかりはっきりしない。南方向は、干拓地と潮受け堤防がかすかに見えた。島原半島は霞の中であった。
展望台で昼食にする。結構西からの風が強く弁当を包んでいたビニールが吹き飛ばされそうになりザックを乗せ重石代わりにした。風で身体が冷えてきた。上着を取り出し着込んでからゆっくりと食べた。
そのうちに誰か登って来るかと期待していたが一時間たっても姿はなかった。
さすがに下界の選挙の喧騒もここまでは届かない。

展望台


烽火台跡
烽火台跡には下山の途中で立ち寄った。
山頂からは10分ぐらい降りたところで林道から藪の道に入りおおよそ100mのヒノキ林の中にあった。
狼煙を両隣へ伝達するのに好都合な地形であったのだろう。いまは植林に覆われまったく視界は利かない。
わずかに野面の石積みがあるだけで烽火台の跡らしいものはなかった。説明版が建ててありやっとたどり着けた。
町民いこいの森
マウンテンボードのできるゲレンデ もある。
リフトは現在休止中で、園内は無料で開放されている。
子供の遊具も整備されているが平日のためか子供の姿へなく、10人ばかりのお年寄りがグランドゴルフを楽しんでいた。

町民いこいの森
リフトの頂上から「いこいの村長崎」のテニスコート付近を見下ろす。

平成新山と諫早湾
烽火山の山頂からは春霞がかかり平成新山は見えなかった。
8合目まで下山した付近で稜線がはっきりしてきた。
中間の海は諫早湾。
もともと有明の海は潟で黄色く濁っている。しかし、左側の海は青く見える。右側の褐色の部分は陸地ではない。潮止め堤防で締め切られた内水面である。
諫早近郊の生活排水が流れ込み黄色に淀んでいる。
現在は、裁判で工事差止め命令が出て工事は中断したままである。
手前は高来・湯江の街。
山頂付近に咲いていたネコヤナギ。
ネコヤナギは平地の川原にあると思っていたが意外と高い山に群れていたので珍しく感じた。

ネコヤナギの花

木イチゴの花
5月ごろになると黄色に実が熟れて見た目も美しい。
刺があり摘むのに手間取るが甘くて美味しい。
また地面に這っている野イチゴの白い花もいたるところに咲いていた。
熟れるころにまた来てみたい。

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