みちのく紅葉の旅(3)
☆ 足跡を残した山(1)
旅行で見る目が変わったというのか、楽しみが増えたというべきか、数年前の旅行と比べ、見るポイントが増えている。それは山を眺める楽しみである。
八幡平、白神山地、八甲田山と自分の足で立ったところは勿論、バスの中からではあったが岩木山や岩手山も眺めることができ楽しかった。それも一方向からだけではなく、東から南から、あるいは北から西からと変わりゆく山の姿を眺めることができたのは望外の収獲と言っても良いだろう。 これまでも北海道の大雪山、十勝岳、羊蹄山、東北・北陸では朝日岳,蔵王、磐梯山などをはじめ、北、南アルプスなど結構旅行中に近くで眺めたり、蔵王などは山頂まで登ったりしている。 しかし、どれもがそのときの感動を忘れ、あまり記憶に残っていない。それは予備知識もなく漠然と眺めていたからだ。今回は山歩きを始めて3年も経つと、いつの間にか生かじりながらであっても、それなりの山の知識をもっているだけに、興味が湧き注意深く見るようになっていた。
コース順に、まず八幡平から
八幡平の「平」という字から「平らなところ」というイメージを持っていたが、深田久弥の『日本百名山』によると「八幡平の平をタイラではなくタイと読むのは、八甲田山などに多い『岱』と同義語であるからであろう。タイとは山上の湿地帯の意で、あるいは古語の『田井』から来たのかもしれない。東北地方では山上の湿地を御田(おた)とかタンボとか呼ぶ例が多い・・・・」と書いてあった。 そのことを頭に入れて、バスから湿地が見えるかな、と気につけていたが分からないまま頂上の駐車場に着いてしまった。それは頂上に着くまでのアスピーテラインの変化に目を奪われていたせいかもしれない。 バスを降りる前、「まずトイレを済ましてから眺めは楽しんでください。後からバスが何台も続いてきています。あとからでは混雑しますよ」とバスのガイドさんは言った。 言われるままトイレに走ったがすでに大混雑であった。
八幡平見返峠の展望所は車と観光客で溢れそうな状態。ここが標高1540mの山なのかと疑うほどの賑わいである。 八幡平の山頂はまだ70mほど高い位置になる。登りたい気持ちは充分にあるが、わずか30分の自由時間では諦めるしかない。 雲がかかり時折雲の切れ間から陽が射す程度で風が強い。吹き飛ばされないように帽子を手に持って歩いた。耳が冷たく身体全体が冷えていくのが分かる。気温は3℃と聞いた。寒いはずである。 期待した岩手山は中腹から上はガスがかかって見えない。5、6年前、松川から八幡平樹海ラインを通った時にも岩手山はその全容は見せてくれなかった。
登ってきた秋田県側のほうは黄色の山々が続いているが山頂を境に岩手県側は黒味がかった緑の樹林が多く対照的である。 出発前にはまだ時間はあったが寒くて早々にバスに乗り込んだ。バスは10時35分に下山した。
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