西アフリカへ旅したつもりで
平成15年11月24日

 3日間の慌しい旅は終わった。きょう午後から新幹線で帰るばかりである。
 昨夜、出石から大阪へ帰る高速道路は往きと同じように渋滞した。予想していた時間を1時間以上も遅れて息子たちの家に着いた。
 今朝は何時もの時間より遅く8時に起きた。朝食の後、近所を1時間ばかり散歩して戻ったのが11時。新大阪を15時半の新幹線に乗るまでかなりの時間がある。
 さて時間潰しに何処へ出かけるか家内と話し合った。息子の話によると国立民族学博物館は歩いて20分で行けるという。
 以前から行ってみたいと思っていた博物館である。家内の意向も聞かずにそこへ行く事に決めた。この家に来たのは息子たちがここに引っ越してから初めてである。民族学博物館がこんなに近い処にあるとは知らなかった。
 今回の旅は、最後の最後まで思いつきの行動で終わりそうである。
 国立民族学博物館は万博公園の一角にある。東口ゲートから入り太陽の塔を左前に見ながら公園内を歩くと辿り着く。
 博物館に着くと左手の特別展示館にご覧のような看板が目に付いた。
 何だか面白そうだ。
 入場券を買うときもらったパンフレットによると『西アフリカおはなし村』の特別展は、7月24日から開かれ、明日の11月25日までになっている。

 ここでまた心変わりがした。博物館は息子の家の近くだ、本館の展示場はこれから何時でも来る機会はあるだろう。今日を逃がしたら西アフリカの特別展はもう見られない。
 渋る家内を引っ張ってここから見ることにした。
 特別展では、西アフリカの人たちの屋敷や市場を再現し、衣、食、住、楽を展示紹介している。ほかに昔話や音楽の演奏などもをやっているという。

 会場に入ると、入口に民族衣装がバーゲンセールみたいに山積みされていた。若い女性たちが手にとって選んでいる。

 この会場に入るとまずは貸衣装を着て西アフリカ人になったつもりになってもらいたいという趣向のようだ。ガイドさんが私にどうぞと薦めてくれたが手を横に振って断わった。

 子供や若い人たちは喜んで着ていたがこんなとき年齢が邪魔して勇気が出ない。

 民族衣装を身に付け満足の二人に写真をお願いしたら快く応じてくれた。
 一口に西アフリカと言っても,具体的に国の名前が浮かんでこない。浮かんでくるのは砂漠と野生動物ぐらいである。

 サッカー・ワールドカップで大分県中津江村に滞在し、住民から熱烈な歓迎を受けた「カメルーン」はこの地域だという。

 これは民芸品だろうか?楽器のマラカスだろうか?説明書がなくてはどうにもならない。
木の実の殻を利用したのか,木をくり抜いて造ったものか?
食器・お椀のようである。
それぞれに違った彫刻が施されいた。
民芸品
説明書がなくて残念
木彫り、装飾品など
二階の展示場は,それぞれの技法で織られた布や服が展示されていた。
体験コーナー

 今日は太鼓(ジェンベ)の体験の日だそうである。
 ジェンベは、一本の木から削りだされた胴体にヤギ皮を張った、片面太鼓でアフリカ西部地域に広く分布する太鼓だという。

 乾いた高音と地を這うような低音を使い分けて豊かなリズムを奏で、館内に響きわたっていた。

 右端の赤いシャツの人が先生役のアフリカ人。立っている人は通訳の日本人。
 館内放送で体験コーナーへの参加を呼びかけている。
 20個ばかりの太鼓がコの字型に並べてあり、まだ空席がいくらか残っていた。
「おとうさんもやってみたら?」と息子のひと声でその気になった。
先生の横の席が空いている。私はそこに座った。(赤いシャツの右隣)
 ジェンベは結婚式、成人の儀式、子供の命名式、種まきの時、収穫のお祭り、満月の夜、イスラム教の断食明けのお祭りなどなど様々な行事に叩かれ、人々は太鼓に合わせ何時間も、時には数日にわたって踊り続けられるそうだ。
 まずは、ジェンベのセットの仕方から始まった。普通はひもや布で肩からぶら下げるそうだが、体験コーナーでは椅子に座ったままなのでジェンベを股に挟み少し前に倒す。
 
それによって床とジェンベ下面に斜めの隙間が出来る。ここから空気振動を逃がし、よい音を出させるのだという説明に納得。

 つぎに太鼓のたたき方に移る。和太鼓のようにバチは使わないで素手で叩く。手のひら全体で太鼓の中央を叩くと腹の底に響くような音、手のひらが太鼓の縁に半分当たるように叩くと反動で指先4本が太鼓面を叩き高い音が出る。

 この基本を何回も練習したあと、高低の組み合わせ、リズムの早遅へと変化させる。ピアノのようにドレミの鍵盤があるわけではなく、手のひらと指先の使いこなしにたよるだけに難しい。

 手首のスナップの利かせ方ですべてが決まるような感じがした。子供や若い者はリズムや音階もすぐ上手になるが私は両手の組み合わせが上手く出来ない。リズムに集中すると音階がお留守になるといった具合だ。

一人だけドジッで目立つようになり、とうとう皆に付いていけなくなり退席した。
知らぬ間に力んでしまったのだろう。手のひらと指先が痛かった。

 上手下手はともかくとして、アフリカの楽器を叩くなんて想像もしなかった。思いがけなくジェンベに出会え楽しいひと時であった。

 種々の民芸品、織物などの展示を眺め、再現した屋敷や市場を歩いていると、いつの間にかアフリカを旅しているような気分になっていた。

 遠い国の存在であった西アフリカを身近に感じた『西アフリカおはなし村』であった。

※ これをもちまして11月21日〜24日の関西・丹後の旅日記は終わります。

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