同窓会
二月十二日、中学校を卒業してから50年目の同窓会に出席しました。
小学校が国民学校に、旧制中学校が新制中学校にと、常に学制改革の
初年度に入学した者たちです。
田舎にしては大規模の中学校で、一学年が1クラス50人で、6クラスの
約300人が卒業した同窓会です。そのうちの一割が高校に進学、残りの
九割が家業に就いたり、就職したりで散らばっていきました。その頃は、
現在の高校進学率九十何パーセントという時代と違って、殆どの者が社
会人になっていったのです。
あれから50年。5年ごとに同窓会は開催されていましたが、とくに今年
はきりのよい50回という節目の年で盛大にやろうと、世話役幹事の人た
ちが頑張ってくれました。
お陰様で三割の友が出席しましたが、本人の体が不調で、あるいは連
れ合いの看病で、またある者は、まだ現役でどうしても仕事の都合が付か
ないと嬉しい悲鳴をあげて欠席した頑張り屋(?)もいました。
人それぞれの価値観の問題で、幸不幸は本人の捉え方次第とは思いま
すが、私はもうこの年齢になると人生の幸不幸の明暗が現れてきているよ
うに感じます。すでに故人となった友が43人にもなっていたのには驚きと
寂しさを感じました。
受付で、小学校に入学したときに付けてもらったのと同じような大きな名
札(ひらがなではありません)を胸に付け、記念撮影で雛壇に並びシャッター
を切るまでに10分もかかりました。体が衰えて高いところにあがれないのか、
わがままの本性を現し、勝手に振る舞う悪童に戻ったのか、なかなか落ち着
きません。小学一年生の入学記念撮影の時は、先生の言うことをよく聞いて
早くできたのに・・・・。
写真屋さんは、自分の親のような高齢者をなだめるのにひと苦労したいます。
席についてからがまた大変。挨拶好きの面々が入れ替わり立ち替わり喋り、
料理を眺めている時間が30分、やっと乾杯に漕ぎ着けました。
アルコールの効き目は抜群で、禿頭がいがぐり頭に、霜降りの髪が黒光りの
おかっぱ頭に変身し、紅顔可憐な美少年、美少女に見えてきます。あちこちで
懐かしい方言が飛び交い、大笑いで話す者、深刻な顔になって話し込む者とさ
まざまです。
時間の経過と共に、男女別々の席が乱れだし、幾つものグループに分かれ、
美男美女が胸の内を証します。
「おいは(俺は)あんたが好きやった」、「どうして早く言わんかったとね。今ごろ
言うても、もう遅か」まわりがどっと笑い、静まりかけたころを見計らって「今からで
も遅くはなか、熟年離婚ばして、一緒になれ!」誰かがけしかけると、また笑いで
盛りあがる。
これからも私は同窓会には出かけるでしょう。お世辞とは分かっていても同級
生が「あんたは若い」といってくれると嬉しいからです。
太鼓腹にならないように腹筋運動に励み、またふさふさした髪がいつまでも残っ
ているように海藻を食べているのは、五年後の再会で「あんたは若い」と言ってもら
いためですが、他人さまは健康のために運動をしたり、海藻を食べているとと勝手
に解釈しているようです。