うぐいす

 朝食の時間になるとウグイスの鳴き声が聞こえてくるようになった。意識するようになったのは4,5日前からである。

昨日、近所の人と話していたらウグイスの鳴き声が話題になり「今年はいつもより半月ぐらい里に降りるのが早いようだ」とその人は言った。わたしは前年と比較するほど関心は持っていなかった。その人の話しを聞いて、同じ処に住んでいながら花鳥風月に心を向ける余裕のある人と関心のない者の差を感じた。

今朝(2月20日)は、巾4メートルほどの市道を隔てた高等学校敷地のヒノキまで近づいてきて鳴きだした。食堂から10メートルも離れていない近いところである。

いくら関心が薄いといいながらも、去年まではこんなに近くまで来て鳴いていた記憶はない。

この市道は7時半から1時間の間は、小学生、中学生、高校生たちが行き合い、また通勤の車も多く喧騒な時間帯になるが、道路沿いに並んだヒノキの植樹帯では、人間の行動を無視して上手に囀っている。

 勤めから開放され、時間の制約を受けない身分となっている私は、ウグイスの声を聞きながらゆっくりと朝食を楽しむことができる。至福のひとときである。

そのうちに我が家の庭の樹に飛んできて、姿を見せてくれないかなぁと欲張っている私になっている。

たぶん風観岳から自然林を伝ってここまで降りて来たに違いない。しかし、その途中の麓は、いま住宅地造成工事が進んでいる。自然の林が剥ぎ取られてしまったとき、たぶんここまでウグイスは降りてきてくれないだろう。

至福の中にも暗雲がじわりじわりと近づいてくるのが感じられる。

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