元気な二百二十二歳
― 雷山〜井原山往復縦走(背振山系、福岡・佐賀県境) ―
H13.4.8 参加者10名
「犬も歩けば棒に当たる」の諺ではないが、あちこち出歩くと意外な人と出会う
ものである。今日は三人併せて222歳になると自慢話をしてくれた登山者に出会
った。
4月8日、ハイキング仲間と雷山〜井原山往復縦走に出かけた。
天気予報のとおり朝から晴れている。この分だと雷山(955m)も井原山
(983m)も山頂は360度視界が開けた山だというから、楽しみである。10名
の参加者のなかではこの二つの山に登ったことのない者は私を含めて3人ぐらい
しかいない。いつものことだが初めての山は期待でわくわくする。
長崎(諌早市)から高速道路・長崎自動車道と一般国道を乗り継ぎ、千如寺、雷神
社中宮径由で雷山登山口駐車場まで2時間かかった。
何時もの通り入念にストレッチ体操で体をほぐし、登り始めたのは10時半過ぎで
あった。
リーダーの説明ではここから雷山山頂まで40分の行程。しばらくコンクリート舗
装の林道を登り、「山頂まで524m」の道標のあるところから左の細い道に入
る。杉山の中を10分ほど登ると雷神社上宮である。石の祠が三つ並んでおりそれ
を囲んでいる石の柵は壊れていた。これからの道中の安全を祈願して手を合わせ、
再び出発する。
杉林の道は丸太を横に敷いた階段でかなりの急な登りである。ここを10分ぐらいで
抜けると裸木ばかりの原生林になり空が見えて急に明るくなる。これから登る道を
見上げると、これまで以上の急な坂で岩肌がむき出しで簡単には登れそうにない。
「登れるかな?」予想外の険しさに不安がよぎった。というのは、3月は風邪をこ
じらせ十数年ぶりに寝込んでしまって5キロも体重が減った。今日に備え、数日前
にトレーニングをして足慣らしはしたつもりではあったが完全に体力が回復してい
ない。
ゆっくりペースで登ることにした。足の疲れは感じないが息が弾んで苦しい。風邪
の後遺症がまだ残っているようである。急なところでは岩に掴まり、樹を捕まえ四
つん這いになって登った。今日のコースではここが一番の難所で雷山まで登ってし
まえば井原山までの縦走はここよりは楽だと聞いていた。予定の40分をはるかにオ
ーバー、1時間かかって山頂に着いた。
噂のとおり、北の方角から西の方へ目を移すと、博多湾、前原市、二丈岳、女岳、
浮岳、唐津湾と美しい眺めである。南、東の方角は少し霞んでぼんやりしていた。
ここで少し早めの昼食を摂る。
12時、次の目的地井原山へと出発。熊笹で覆われた尾根は眺めが良くて足取りが軽
い。進行方向には幾つもの稜線の向こうに一番高い山が見えている。あれが井原山
だ。
雷山から井原山までは尾根道を1時間30分である。従走路は熊笹あり、芽吹きの準
備をした冬木の林ありで変化に富んでいる。井原山には予定より10分早く1時間20
分で着いた。早めの昼食が功を奏したようである。
山頂にはあちこちのコースから来た登山者で賑わっていた。四方の眺めを堪能して
記念写真を撮り、再び来た道を折り返し雷山目指した。
しばらく行くと前方に男性二人に女性一人のパーティーが鈴の音をさせながら歩い
ている。三人は高い声で楽しそうに話しながら、いかにも山を楽しんで歩いているといった感じである。
近づくと「先に行って下さい」と道を譲ってくれた。
「私たちも早くは登れませんからこのままでいいですよ」と辞退したが、
「いや、若いもんが脚は早い」と言って先に行くように促された。お礼を言って先
に登りはじめた。
追い越して20分ばかりして、腰をおろし休憩するのに最適の大きな石のあるところ
でひと休みした。さっき道を譲ってくれた三人が鈴を鳴らしながら追い着いた。私
たちが休憩してから2分ぐらいしか経っていない。今度は、
「どうぞここで休んでください」と場所を譲った。
「じゃ、座らせてもらおうか」三人は快く座ってくれた。
「この三人はな、歳を併せると222になるんよ」張りのある声で男性の一人が切
り出した。三人とも小柄で、どちらかといえば細身である。改めて顔を見ると高齢
者には見えるが、どう見ても77歳よりもっと若い顔立ちと張りのある話し方であ
る。
「定年で仕事を辞めてから山に登ったらな、面白くてこんな楽しいことがあったの
かと、いままで損したような気がした」それからは山登りにとりつかれてしまった
という。
「このあいだはな、鹿児島の霧島に登ったが、福岡からえびのまで高速を140キロ
で飛ばし、2時間で着いたよ」ますます元気のよい話である。
私たちパーティーの平均年齢は60歳そこそこ。あまりの元気の良さに呆れて黙って
聞いていた。
私は、77歳まであと10年。その時まだ山に登っているかなぁ。
222歳のパーティーを目標に頑張らなくちゃ。