04北アルプス山行記

燕岳〜大天井岳〜常念岳〜蝶ヶ岳縦走

盟主・常念岳へ

 いよいよ常念岳を捉えるところまでやって来た。

 天候は申し分ない。と言いたいところだが山の気象は急変する。午後からの雷雨が心配だ。

『百聞は一見に如かず』ここで私の蛇足は必要ない。すばらしい眺めを画像でご覧いただくとして、山の名前の由来に付いてだけ、深田久弥の一文を紹介しておこう。

 昔は常念岳は常念坊と呼んでいたそうである。
 その謂れは、昔、密猟者がこの山の谷間で野営していると、頂上から風に乗って夕べの勤業のお経と鐘の音が聞こえてきた。それが夜通し続くので、密猟者は良心の呵責にあい、再びこの山へ近づこうとしなかった。それを聞き伝えた麓の人々は、この山に常念坊という名前を付けたという。(深田久弥の「日本百名山」より


東天井岳付近から眺めた、前穂高、奥穂高。
左端にはかすかに乗鞍岳も見える。
朝陽をまともに受けて明るい眺めだ。
前方にガスがかかった常念岳が見えてきた。
時刻はAM7:10.太陽はまだ東斜めから射し西に面した斜面は陰っている。
左から前穂高、奥穂高、涸沢岳、南岳、中岳と続く。
横通岳を巻いて通り抜け、急な坂を下り着いたところは常念乗越。
ここにある常念小屋では従業員たちが聡出で布団干しをしていた。
カメラを構えると両手を振ってポーズをとってくれた。
右端の屋根の上に尖がった山が見えるのは槍ヶ岳。
常念乗越から見た常念岳は、首を天井に向けるような位置にあった。
常念乗越へ降りてくるパーティーの行列がアリのように小さく見えた。
その行列に向って登り始めた。
やっと常念岳の山頂まできた。

標準タイム1時間のところを2時間かけて登りついた。
きょうは中房温泉を発ってから2日目、疲労が蓄積しているのだろう。一行の足並みが乱れ間隔が開くようになった。
私はいつも最後尾についていた。
常念岳山頂の祠。

先に到着していた一行に合流し、休憩した。
ここで集合写真を撮る予定であったが、遅く着いた焦りがあって、すっかり忘れてしまった。
誰か要望すれば揃って写ったのに、と今になっては残念である。
それとも疲れきった顔を写したくなかったのかもしれない。
山頂から蝶ヶ岳への下り路。
岩が重なり合った急な坂が限りなく谷底へ続いている。
ここまで登ってくるのも大変であったが、この路を見下ろし、常念山岳の険しさを見直した。

鞍部から、いま下って来た常念岳を見上げる。

不安定な岩の路を1時間40分かけてやっと鞍部に下り着いた。やれやれである。
時間は12時10分。昼食の休憩をとる。
強い太陽の陽射しを浴びながら、硬い米粒の握り飯を噛み砕いた。美味しさも楽しさもない。ただ燃料補給といった義務的な昼食になった。

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