星野村の『しずく茶』
山 行 日  2004・6・6

山   名 カラ迫岳(星野村・前津江村境)、石割岳(星野村・黒木町境) 

行  程
JR諫早駅裏6:20 ⇒ JR西諫早駅前6:35 ⇒ 杷木インター8:23 ⇒ 9:40カラ迫岳登山口9:55 ⇒ 11:25カラ迫岳11:30  11:53林道登山口12:00 ⇒ 12:25石割岳登山口(昼食)13:00 ⇒ 13:50石割岳14:00 ⇒ 14:35石割岳登山口14:40 ⇒きらら温泉・茶の文化館16:15  杷木インター17:20 ⇒JR諫早駅裏19:00

福岡県八女郡星野村の『茶の文化館』は、開設十周年を祝う横断幕が掲げてあった。
ここで、飲んだあとの茶の葉に酢醤油をかけて食べる、という思いがけない体験をした。

この珍しい茶道というか、お茶の楽しみ方は十年前から隣町の八女茶に対抗し、星野茶PRの一環として始まっていたのかもしれない。

開設後10年も経った今、初めてここに来て私はお茶に対するイメージが変わった。

『茶の文化館』を目的に星野村までやって来たわけではない。この日はカラ迫岳(1,006m)、石割岳(941.5m)登山でこの町にやって来たのだった。

山行の感想を書き残しておくのが登山随想の主旨だから登山と外れた余録ばかりを書くわけにはいかないので、お茶の話は後回しにして、まずは山の様子から書き始めよう。

630分諫早を発って、長崎自動車道から大分自動車道へと走り、杷木インターから浮羽町を通り、合瀬耳納峠を越えて星野村へやって来た。

耳納山系の合瀬耳納峠を越えると曲がりくねった道路が下へ下へと続く。谷底の少し拓けたところに星野村があると言う表現が適している。
峠から5分ほど下ると展望所があった。
ここで休憩する。展望所から降りてきた方向を見ると峠の頂上まで棚田が積み重なって伸びていた。ここは日本棚田百選の一つに選ばれた広内・上原地区の棚田風景。
まだ田植えの準備にとりかかったところで絵としては不満だが黄金色の稲とあぜに咲く彼岸花のコントラストはすばらしいにちがいない。
説明板には『137段、425枚の精巧な石積みの棚田。田圃の面積が石積の面積よりも小さいところ、また田圃の巾が1mに満たないところもあり、傾斜地の中で最大の農地を確保するために苦労した先人達の努力がうかがえます
』とあった。
カラ迫岳
星野村の方から登ると山頂に辿り着くまで殆ど山の姿は見えない。前津江村へ降りて林道から眺めたカラ迫岳。

カラ迫岳登山開始は955分。7合目あたりまでは登りが続いたがあとは緩やかなアップダウンであった。コースの殆どが杉の植林の中で視界はあまりよくない。9合目あたりから視界が開けはじめ、ほぼ360度の展望がきく山頂が待っていた。山頂までは1時間30分。岩が露出したところには、むかし金を採掘していた穴が数ヶ所残っており、その二つは登山コースで見られた。いずれも立ち入り禁止の有刺鉄線が張ってあった。また、旧久留米藩・天領日田国境石をなぞるようにした登山コースもあった。

登り始めてしばらくの間は沢伝いで木漏れ日の差し込む自然林の中を歩いた。
金採掘の穴
垂直に掘り下げた縦穴や横穴もあった。
案内版によると、天領日田と久留米藩の国境石が山頂付近には、約5kmの県境区間に約70本、番号順に埋設されているそうである。

1130分下山開始、山頂には5分間いるだけで先を急いだ。この後バスを待たせている林道へ降りて、次ぎの石割岳登山口までバスで移動した。

石割岳登山口に着いたのは12時25分であった。駐車場の広場で昼食にする。

リーダーから登山開始は13時と告げられ、登山の楽しみの一つである昼食も、ゆっくり味うひまもなく燃料補給といった感じで握り飯を頬張った。

石割岳は山桜の名所だと聞いていたが、新緑を過ぎたこの時期の桜は山全体の緑と溶け合って区別がつかなかった。山頂まではおおよそ1時間のコースであるが登りはじめから急な傾斜の連続で、満腹の身体を持ち上げるのに苦労した。

山頂に着くまで樹林帯続きのコースは、気分を癒してくれる景色に乏しく精神的に疲れてしまった。山頂は南と東に展望が開け、午前中に登ったカラ迫岳、御前岳が比較的近くに見えた。南西の方向には有明海越しに雲仙岳が聳えていた。

石割岳登山口
昼食後、石割岳へ出発。
石割岳山頂から東南方向に聳える御前岳
石割岳山頂の標識と三角点

10分の休憩で下山開始。下りは一部分別のコースを通ったがここもかなりの急な坂であった。1440分バスに乗り込み、地元の温泉『きらら』へ向った。

入浴のあと茶の文化館で一腹する予定になっているが私を含め4名は温泉をパスして茶の文化館へ直行した。

御食事処『星野茶寮』で、緑豊かな耳納(みのう)連山、棚田百選の一つ広内・上原の棚田を眺めながら生ビールを楽しんだ。棚田はまだ田植えの前で、横に帯状に延びた石垣が谷底から尾根まで水平に積み重なっている。青田が伸びた夏、黄金色に実った稲とあぜに咲く彼岸花の季節は、一段と見応えのある棚田風景だろうと想像した。

1時間が過ぎたころ入浴組の一行20人がやって来た。お待ち兼ね「しずく茶」をいただく順番になった。

では『しずく茶』とは一体何なのか、どんな茶道なのか、しずく茶と一緒にお盆に載っていた「しおり」で説明しよう。

 @茶碗に玉露を茶さじ1杯程度を山形に入れます。Aそこに45℃前後まで冷ましたお湯を周りから静かに注ぎ、蓋をして2分待ちます。B茶碗を左手にのせ、右手で蓋を少しずらし、そのまま軽く蓋を押えて、茶碗と蓋の間からこぼれ出る玉露のしずくをすすります。舌の上で転がすようにして、トロリとした玉露の旨味と香りをゆっくりと味わってください。C2煎目は60℃前後のお湯20ccを茶葉の上から注ぎます。蓋をして今度は1分ほど待ちます。1煎目より少しまろやかな味わいが楽しめます。D3煎目は、2煎目と同温のお湯を同じように注ぎます。3煎目以降にお菓子を召し上がることをお勧めします。E4煎目は、80℃のお湯をたっぷりと注ぎ、茶の葉が開くまで待ちます。熱いお茶を注ぎますと、煎茶のようなさわやかな渋みが出てまいります。1煎目とはまったく違ったお茶の味わいです。F飲んだ後の茶の葉は酢醤油をかけてお召し上がりいただけます。玉露の茶の葉はやわらかく苦味がありませんので、野菜感覚でおいしく食べられます。またお茶が健康に良いことはよく知られていますが、茶の葉に含まれる成分の中には、水に溶けないものも多く、まるごと食べることによりこれらを摂取できます。

 と書いてある。

『しずく茶』
ワンセット300円。
左下、蓋付き茶碗の中に
45℃前後まで冷ましたお湯を周りから静かに注いだ玉露が入っている。
右下は御茶菓子。その上は茶道を書いたしおり。
左上の器には、2煎目に使う60℃前後のお湯が入っている。
茶碗を左手にのせ、右手で蓋を少しずらし、そのまま軽く蓋を押えて、茶碗と蓋の間からこぼれ出る玉露のしずくをすすります。舌の上で転がすようにして、トロリとした玉露の旨味と香りをゆっくりと味わってください・・・・・。

しおりのとおり忠実に作法を守って嗜むハイキングクラブ会員

 しずくを舌の上にのせた瞬間、粘り気のある甘い水滴の感触がした。口いっぱいにまろやかさが溶け広がったころ飲みこむ。渋味のある番茶に慣れているせいか、これがお茶なのか、とまったく別物を飲んでいるような感じがした。

最後に茶の葉を食べたが適当に歯応えがあり、野菜を食べているのとかわりはない。ここでは酢醤油の味付けだったがお好みの調味料で味付けすれば一層おいしく食べられそうである。

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