思いがけない積雪に苦戦 釈迦ガ岳〜岳滅鬼山縦走 |
山 行 日 2003・2・15 山 域 耶馬・日田・英彦山国定公園(英彦山山系) 行 程 |
きり石トンネル南口に9時30分に着く。きり石トンネルのある福岡県宝珠山村まで諫早を出発して3時間である。いつも思うことだが九州の西の果てに住んでいると山登りには不便である。
きょうの登山はここがスタートになる。周辺の山々を見渡しても積雪の気配はない。天気は快晴、雨具もアイゼンもザックの中にしまいこんだ。 トンネル口から釈迦ガ岳(844m)までのコースは、予想が外れ急坂続きで戸惑った。岩場の多い尾根道は北風がひっきりなしに吹き付け、身体が温まるひまはなかった。左の耳と頬は冷たさで感覚が鈍る。 見晴しは最高、東西南北どちらを向いても景色を遮るものはない。東に、これから縦走する岳滅鬼山、山頂に神殿が聳える英彦山、北に障子岳、福智山、西に大日岳、古処山、遠く南に涌蓋山、と雄峰のオンパレードである。
この先の道程はまだ長い。5分間の休憩で次の目的地・岳滅鬼山へ急いだ。樹林帯の変化に乏しいアップダウンのコースはハードではないが気分的に滅入ってしまう。 きょうの山行記録は私が仰せつかっている。そのことを知っているKさん曰く「花もなければ眺めも良くない、こんなつまらない山行は感動がなく報告書が書きにくいですね」という。前を行くHさんと後から来るKさんに挟まれて私は登っていた。退屈しのぎとでも言おうか二人は老後の生活について年金が話題になっていた。そのやりとりを中間に挟まれ聞いていたので「二人の年金の話でも書いておきましょうか」と笑った。 南斜面を巻いて通る処まで来た。幸いにこの場所は視界が開けて眺めが良い。時間は11時30分。朝早い出発で5時ごろに朝飯を食べているので腹が減っていた。リーダーの判断で30時分の昼食タイムとなった。先ほどの北風の冷たさとは打って変わってポカポカ陽気である。良い場所を選んでくれたと感謝しながら食べる。 腹ごしらえをして12時ちょうど出発。縦走の方向は北東である。13時ごろになってだんだんと残雪の道に変わってきた。樹林帯の中で見晴らしは利かないが10センチ程度の雪道を歩くのは楽しい。 落葉したブナ林では、雪原に太陽が創り出したブナの樹形の影に見惚れながら歩いた。午前中の単調さとは違い、雪を見て、やはり山に来れば何らかの感動は味わえるものだと思った。
釈迦ガ岳から岳滅鬼山までは距離にして5.2km。時間の経過とともに岳滅鬼山に近付いているのは確かだが積雪の深さがだんだんと深くなってくる。足を持ち上げ歩くためにスピードは遅くなってきた。 岳滅鬼山(1,036.8m)に13時50分到着。先発の健脚パーテーは既にここを出発して岳滅鬼峠へ向った後だった。われわれのパーテーはスロー組8名である。先発パーテーは1時間前、岳滅鬼山に到着したことを携帯電話で知らせていた。われわれは予定より1時間遅れている。
下山にかかると北東に面した急勾配の岩場は、深い雪で埋もれていた。先発隊の残した足跡を頼りにロープ、鎖、ハシゴを掴み慎重に下りた。雪に隠れた岩場では足場を靴先で探し、時間をかけて一歩一歩下りた。
林道の雪は足跡や車の踏み跡が凍り滑り易く、途中まで迎えに来てくれたバスに乗り込むまでに何人もの仲間が尻餅をついた。 林道を歩くこと1時間。あまり遅いのを見兼ねてバスはタイヤチェーンを付け途中まで登ってきてくれていた。予定を2時間オーバー、バスに乗り込んだのは16時20分であった。
帰路に付いたバスの中で、みんな異口同音に「こんなに深い雪山を歩いたのは、初めてだった」と感想を述べあった。 緊張と不安から開放されたバスの中では、あの悪戦苦闘が満足感にかわり喜びが充満していた。 |