酒呑童子山とハナグロ山

山 行 日  平成15年11月9日(小雨)
場   所  大分県日田郡上津江村・中津江村境 
酒呑童子山(1180m)、小鈴山(1120m)
、ハナグロ山(1086m)
行   程  
 西諫早駅前6:20⇒8:42菊地インター⇒10:15カシノキズル峠10:25⇒10:40小鈴山⇒11;30酒呑童子山11:40⇒12:20スーパー林道登山口(昼食)13:00⇒13:10カシノキズル峠⇒13:55ハナグロ山14:00⇒15:05登山口霧越林道⇒15:10穴川峠15:25⇒17:00狗奴温泉⇒19:40西諫早駅前


この急な岩場を登りつめると酒呑童子山の山頂になる。
湿った岩とクサリに緊張した。




酒呑童子山の標識






わずか数秒間の眺め。
もう少し雲が切れてくれれば、素晴らしい墨絵の世界だったろうにと悔やまれる。






兵戸スーパー林道に下り着いた所の登山口






ハナグロ山山頂の標識。
ガスが深くご覧の通りフラッシュの光で何とか読み取れる。






時には、こんな黄葉に出合った。
葉っぱが大きくて、もみじではないようだが、なんでしょう?






この一株だけが今回の登山で一番綺麗な黄葉であった。






ハナグロ犬を祀った祠






霧越林道からの登山口
今回はハナグロ山からここへ下りてきた。





山名に惹かれ、一度は登ってみたいと駆り立てられる山もある。

酒呑童子山とハナグロ山はそんな山であった。

またこの両山は、ワールドカップ(サッカー)でカメルーンチームがキャンプ地として選んだ中津江村と上津江村の村境にあることから一度は行ってみたい所でもあった。

酒呑童子山は丹後の国大江山の酒呑童子山の鬼伝説と同じで、山懐深い鬱蒼とした山域から鬼がいる山として名付けられた山であるらしい。

また同じ山域にハナグロ山もある。ハナグロ山は、猪を追う猟師が逆に猪に襲われ、危機一髪を猟犬ハナグロが一命を投じて猟師を救った、その行為に感謝して祠を建てられたそうで、そのことからハナグロ山と名付けられたという忠犬ハチ公ならぬ忠犬ハナグロを称える逸話の山である。

懐深い山も終戦後、原生林の伐採、植林事業が盛んになり、それに伴う林道が網の目のように整備された。今は鬼が出てくるような深山の険しさは薄れてしまったが登山者には日帰りで簡単に登れる山になっている。

これを良しとするか悲しむべきか同じ登山者仲間でも意見の分かれるところであろう。

この二つの山に登るため、諫早から4時間かけて登山口であるカシノキズル峠にやって来た。今日もまた伯耆大山登山と同じで雨模様である。

天気は一週間サイクルで変化し、日曜前後に低気圧が通過するようになった。私は毎日が日曜でウイークデーでも構わないが、リーダー達はまだ現役、どうしても休日の計画となってしまう。

ここカシノキズル峠は標高1000m、菊池市から峠まで登る間、ガスがかかりほとんど視界は開けなかった。伯耆大山と違っているのは風がないことである。

天気が良いときにはいつも座り込んで登山靴に履き替える。今日はたいした降りではないが昨夜からの雨で地面は濡れている。片足立ちで靴下を履き、靴紐を結び終わって伸び上がろうとしたら腰が痛み起きあがれない。くの字に曲がったまま痛みをこらえた。

ギックリ腰の前触れである。その原因は、前日まで五葉松の古葉落しで枝に登り無理な体形で仕事した筋肉疲労から来ているらしい。

幸い今日は何時もよりザックの中身は軽い。無理しないで体を慣らしながら登るようにしよう。

登り初めから蹴上げの段差が大きい階段が15分ばかり続いた。辿り着いたピークは小鈴山(1142m)である。スズタケ、雑木が背丈以上に繁り周りは見えないが、もし周りが草原であってもこの天気では眺めを楽しむのは無理だ。

苦労してせっかく稼いだ高度をまた下ること10分で鞍部の地蔵越の十字路に着いた。地蔵さんの前を通り過ぎ直進してまた急坂を登り、最後はクサリ場を攀じ登ると25分で酒呑童子山であった。

登山書によれば、雲仙、多良岳、万年山、久住連峰、などが望めるとあるがまったく駄目である。水分を補給し、わずか10分足らずの休憩で下山しようとしたとき北の方角に少しガスが切れ墨絵のような景色が見えた。それもシャッターを押すわずかな時間であった。

地蔵越に戻って来たとき、小鈴山から降りて来るパーティーと出合った。

リーダーはカシノキズル峠の登山口で出合った地元の人であった。

「私も鹿児島の登山グループを酒呑童子山まで案内します。後から登ってきますからお先にどうぞ」と言っていたおじさんである。

そのとき「この村はカメルーンのおかげで有名になりました」とニコニコしていたが、カメルーン効果で登山案内の仕事が増えたのかもしれない。

私達は地蔵越から左に折れて兵戸スーパー林道へ下りた。この道はスズタケが両側から覆い被さり、雨露でずぶ濡れになった。林道までは地蔵越からわずか10分で登山口に着いた。

舗装された林道に座り込んで昼食を摂ったのは12時20分である。

依然として廻りはガスで眺めは良くない。しかし雨は止み弁当を開いて食べられるだけでも幸せだと思うことにした。

食事の後、バスに乗り込みカシノキズル峠まで移動する。距離にしてわずか1kMほどで、あっという間についた。次の目標はハナグロ山である。

峠の林道を挟んで酒呑童子山は東方向、ハナグロ山は南西方向になる。酒呑童子山を背にした格好で登りはじめた。このコースは階段はなく目的地のハナグロ山までは楽な道だと聞いている。

ここもスズタケとササ尾根が多かったが山頂に近付くつれ照葉樹林に変わり歩きやすくなった。

カシノキズル峠を出発してから、ちょうど1時間でハナグロ山の頂上に着いた。尾根伝いの緩やかなカーブの頂点といった感じで、標識がなければ通り過ぎてしまいそうな所だった。ここもガスで視界は悪い。わずか5分の休憩で出発した。

これからは緩やかな下り坂になる。何処までも自然林が続き、つばき、ブナ、カシ、ケヤキ、と種類も多く、とくに低木のシキミの赤い実が目を楽しませてくれた。またいたるところにシャクナゲが自生しており花の時期には見事であろうと想像しながら歩いた。ブナの大木も見かけたがすでに落葉して裸木になっている。時折、黄色い大きな葉っぱの楓に似た樹木にも出合った。

霧越林道に出る1時間の間、落ち葉の道は足に優しく歩きやすかった。

ハナグロ山は晴天の日に、そしてシャクヤクの花時期にもう一度歩いてみたいコースである。

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